格安の出版代行とは、Kindleなどへの出版申請や電子書籍の体裁づくりを、低価格で代わりに引き受けるサービスのことです。
結論から言うと、格安のサービスそのものが悪いわけではありません。
ただし、価格が安いほど「料金に含まれていない作業」が増えるのが一般的です。
後悔しないためには、契約の前に「何が含まれ、何が自分に残るのか」を確かめておく必要があります。
この記事では、見積書と契約書で確認したい7つの項目を、質問例つきで整理します。
安さの理由は「含まれていない作業」

出版には、原稿を書く以外にも多くの作業があります。
構成づくり、校正、表紙のデザイン、電子書籍のファイル作成、出版申請、そして出版後の宣伝です。
格安のプランでは、このうち「出版申請」と「最低限の体裁づくり」だけが料金に含まれ、ほかは別料金になっていることがあります。
| 作業 | 格安プランで起きやすいこと | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 校正・推敲 | 含まれない、または誤字チェックのみ | 「どこまで直してもらえますか」 |
| 表紙デザイン | テンプレートから選ぶだけ | 「オリジナルで作れますか、案は何点ですか」 |
| 構成・タイトル | 著者に任される | 「章立ての相談はできますか」 |
| 出版後の宣伝 | 対象外 | 「出版後に何をしてもらえますか」 |
追加をくり返すうちに、結果として最初の見積もりより高くなることもあります。
安さだけで決めず、自分に必要な作業が含まれているかで比べることが大切です。
契約前に見るべき7項目

次の7項目は、見積もりの段階で質問しておくと安心です。
答えがあいまいなときは、書面で回答をもらいましょう。
なお、表に出てくるKDP(Kindle Direct Publishing)は、Amazonが提供している、Kindle本を自分で出版するための仕組みです。
出版代行は、多くの場合このKDPを使って申請を代わりに行います。
| 項目 | 確認する質問 | 注意したい答え |
|---|---|---|
| ① KDPアカウントの名義 | 「誰の名義のアカウントで出版しますか」 | 代行会社の名義のみで、販売数を自分で見られない |
| ② 印税の受け取り方 | 「印税はどこに振り込まれ、手数料は引かれますか」 | 管理手数料の割合が書面にない |
| ③ 原稿・表紙の権利 | 「原稿と表紙のデータは納品されますか」 | 表紙の権利が代行会社に残り、ほかで使えない |
| ④ 修正の回数 | 「原稿と表紙は何回まで直せますか」 | 回数の上限も、追加料金も決まっていない |
| ⑤ AIの使用と申告 | 「原稿や表紙にAIを使いますか、申告はしますか」 | 使っているかどうか答えられない |
| ⑥ 納期 | 「出版日はいつ頃の見込みですか」 | 日程が書面に残らない |
| ⑦ やめるとき | 「途中解約や出版の取り下げはどうなりますか」 | 取り下げの手続きや費用が決まっていない |
とくに①と②は、出版したあとに困りやすい項目です。
アカウントが自分の名義でないと、売れ行きを確かめたり、内容を更新したりするたびに代行会社を通すことになります。
数年後に本を改訂したくなったとき、連絡がつかなければ手が出せません。
③も見落としやすいポイントです。
表紙の画像をセミナー資料やホームページに使いたくなったとき、権利が誰にあるかで対応が変わります。
出版代行サービスの選び方そのものは、電子書籍出版代行サービスとは?費用相場・サービス内容・選び方・注意点を徹底解説でも解説しています。
AIで丸ごと書いた本のリスク

最近は、原稿をAIで一気に書き上げて、安く早く出版するサービスもあります。
ここで知っておきたいのが、KDPのルールです。
AmazonのKDPコンテンツガイドラインでは、AIで生成した文章・画像・翻訳を含む本を出版するとき、その内容を申告するよう求めています。
一方、自分で書いた文章をAIで編集・校正しただけの「AIアシスト」は、申告の対象になりません。

つまり、代行会社がAIで原稿を書いているなら、申告が必要になる可能性があります。
⑤の質問は、このためのものです。
もう1つの問題は、本の中身です。
AIで一般論をまとめた文章は、誰が出しても似た内容になりがちです。
読者がその著者の本を選ぶ理由は、著者自身の経験や考え方にあります。
同じガイドラインでは、読者の誤解を招く記述や、本の内容を正確に表していない記述も認められていません。
著者の経験が入っていない本は、ブランディングの道具になりにくいと考えておきましょう。
「出したあと」で差が出る
出版は、申請が通った時点で終わりではありません。
本を誰に届け、どう仕事につなげるかは、むしろ出版後に決まります。

たとえば、出版のお知らせをどこで出すか、読者の感想をどう集めるか、内容をいつ見直すか。
格安のプランでは、このあたりが対象外になっていることが多いため、自分で準備しておく必要があります。
出版の目的が「本を出すこと」なのか「本で仕事を広げること」なのかで、選ぶべきサービスは変わります。
たとえば、名刺代わりに本を持ちたいだけなら、申請と体裁づくりだけの格安プランでも目的は果たせます。
一方で、本をきっかけに問い合わせや講演の依頼を増やしたいなら、出版前の企画と、出版後の動き方まで考える必要があります。
どちらが正しいということではありません。
大切なのは、自分の目的と、サービスに含まれる作業が合っているかどうかです。
見積もりを比べるときは、金額の横に「その料金で何が終わっているか」を書き出してみてください。
同じ金額でも、出版後にやるべきことが自分に多く残るサービスと、ほとんど残らないサービスがあるはずです。
よくある質問
Q. 格安の出版代行が向いているのは、どんな人ですか?
原稿と表紙をすでに自分で用意できていて、申請の手間だけを省きたい人です。宣伝も自分で行える場合は、格安プランでも十分なことがあります。
Q. KDPアカウントが代行会社の名義だと、何が困りますか?
販売数を自分で確認できない、改訂や価格の変更に毎回依頼が必要になる、といったことが起こります。契約前に名義を確認しておきましょう。
Q. 原稿にAIを使っていると言われたら、どうすればいいですか?
どの部分にAIを使ったのか、KDPへの申告をするのかを確認しましょう。そのうえで、自分の経験や考えがどこに入るのかも聞いておくと安心です。
Q. 見積もりは何社くらい比べればいいですか?
決まった数はありませんが、少なくとも2〜3社の見積もりを並べると、どの作業が料金に含まれているかの違いが見えやすくなります。金額だけでなく、7項目への答え方も比べてみてください。
まとめ
格安の出版代行は、含まれている作業が少ない分、契約前の確認がとても大切です。
アカウントの名義、印税、権利、修正、AIの使用、納期、やめるときの扱い。
この7項目を書面で確かめておけば、出版後に「こんなはずでは」となる場面を減らせます。
依頼先選びで迷ったら、見積もりの前に、まずは出版の目的を整理するところから始めてみてください。
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